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【第一回:公開勉強会】“離職率ゼロ”を実現させた人事制度とは?!(経営者・人事労務担当者対象)
メンター育成プログラム 女性たちのための定例勉強会、第3回目は10月23日、調布クレストンホテル クラウンルームにて、「“離職率ゼロ”を実現した人事制度とは?~メンター導入企業の事例から、自社の成長戦略・女性活用の展望を探る~」と題して公開セミナーを行いました。Part1:基調講演
NPO法人GEWEL副代表理事のアキレス美知子氏をお招きし「経営課題としての女性活躍支援~女性の潜在パワーを引き出す人事制度とは~」というテーマでお話しいただきました。
■女性活躍推進をめぐる社会背景
日本企業の女性活躍推進の歴史を見ると、1986年に男女雇用機会均等法が成立。総合職に女性が進出。女性にも男性と同じ機会を与え育てることが制度的にも認められるようになった。
2000年前後には、CSR(企業の社会的責任)の位置づけとしての女性活躍支援の段階に。制度だけでなく、女性も働きやすい職場環境の整備や、ワークライフバランスの追求がトレンドとなった。
2010年に入り、女性の活躍推進は、企業の経営戦略の一つと位置づけられた。2006年には、202030(2020年までに女性リーダーの比率を3割にする)が閣議決定され、ただ女性が働くだけでなく、キャリアアップしてもらい管理職、役員を増やそうという流れになっている。
日本は今、生産年齢人口(満15歳~65歳未満)が減少しており、2050年には現在の半分になると予測されている。出生率は1.41%。生涯独身率(50歳までに一度も結婚したことがない人の割合)は、男性で2割、女性で1割。潜在的女性の労働力を確保しなければ経済が成り立たない状況。
一方、世界経済フォーラム(WEF)が毎年公表している「ジェンダーギャップ指数」(各国の社会進出における男女格差を示す指標)は、日本は137か国中105位。女性の活躍が世界に比べて大きく遅れている。
安倍内閣が、女性の活躍推進を経済政策の柱に掲げ、企業にも目標値を設置して女性の登用を進めるよう通達。しかし現状は、女性の6割が第一子出産を機に退職している。
■女性活躍の課題は何か
企業を対象にした調査では、女性活躍推進の課題のトップ5は以下のとおり。(複数回答)
1)女性社員の意識 80%
2)管理職の理解関心 57%
3)育児など家庭負担への配慮 57%
4)男性社員の理解関心 39%
5)経営者の理解関心 22%
つまり、女性自身の意識に問題があるとする企業が多い。
上司は女性社員をどう評価しているか。
1)昇進や昇格への意欲が乏しい 80%
2)難しい課題を出すと敬遠されやすい 60%
3)感情的になりやすい、注意を受け入れない 32%
4)仕事に対する責任感が乏しい 27%
5)文句や不満が多いのでものを言いづらい 25%
確かに、これらの傾向がある女性はいるが、男性にもいる。女性とひとくくりにせず、一人ひとりの違いを踏まえた上で女性の活躍支援をする必要がある。
■4つの女性のタイプ
女性を、「キャリア向上意欲」という軸と「能力・実績」という軸で4タイプに分類する。
①ワリキリ型(キャリア向上意欲=低い、能力・実績=低い)
必要な仕事はきっちりこなす。働くのはお給料のため。アフターファイブを充実。
②空回り型(キャリア向上意欲=高い、能力・実績=低い)
やる気はあるが、能力や経験が伴わず、意欲が空回りしている。
③安定維持型(キャリア向上意欲=低い、能力・実績=高い)
自分の責任範囲内では有能。今の部署が居心地よく、上昇や変化を望まない。
④スター(キャリア向上意欲=高い、能力・実績=高い)
有能であり、後進の育成にも積極的。社内外のネットワークも豊富。
女性を活用する際に、このような仕事観の違いを知って適切なサポートをすることが大事。
■女性に効く人事施策:その1 入社後のキャリア育成
どの会社でも、新人研修はするが、その後も継続的に研修を行う企業は少ない。とくに女性の場合は育成の機会が男性に比べて圧倒的に少ない。
新卒で入社した社員の3割は3年以内に辞めている。3年目とは、一通り仕事を覚え「このままこの会社にいていいのだろうか」と迷う時期。ここで、一度キャリア研修をして、将来のビジョンを確認することが大切。
次は20代の後半。まだ体力があってやる気もある時期に、これから迎える働き盛りの30代をどう過ごすか、10年後を見据えたキャリアを考えさせる。
30代後半、自分の先が見えてくる時期。現場でやっていきたいか、昇進するか。40代を充実させるためにどんな知識が必要かを考えさせる。
40代の後半には、残り15年をどう会社に貢献するかを考える、あるいは早めに退職してセカンドキャリアを考える人がいてもいい。
節目ごとに、自分のキャリアを考える機会を提供することが望ましい。
■女性に効く人事施策:その2 育休の有効活用、柔軟な勤務スタイル
女性が育休を有効に使えるように、育休中の資格取得を奨励し、eラーニングで学習ができるプログラムを導入する。また復帰後は、ITを活用して在宅勤務ができるなど柔軟な働き方を用意する。一時休職しても戻れる「キャリアリターン制度」の導入も検討したい。
■女性に効く人事施策:その3 メンター制度の導入
メンター制度とは、上司と部下の関係でなく、経験豊な先輩が後輩を育てる人間関係。女性は社内の人脈が乏しく、仕事で行き詰まったときに相談する人が少ない。メンティは、メンターに仕事の悩みを相談することで、違った視点を得られたり、悩みが解決できる。メンターも、他部署の状況や若い人の考え方を知ったり、自分のキャリアを振り返るきっかけになる。組織にとっては社員の育成の促進になり、社内の活性化につながる。
■まとめにかえて 女性育成の7つのポイント
1)多様な人材の活躍は企業の成長に不可欠という意識をトップ層から全社員に至るまで共有する。
2)上司は女性の達成感と成長につながるチャレンジの機会を早期に与え、サポートする。
3)女性だからといって遠慮せず、改革のために必要なフィードバックはきっちり伝える。
4)社内の支援制度は、実情に即して定期的に見直す。(例)育休や時短制度は、やる気のある人をサポートするための制度であり、やる気のない人の既得権ではないことを明確に伝える。
5)昇進を決定する会議において女性の幹部候補を毎回リストアップして、経営層と共有し、育成計画を進める。
6)女性リーダーの育成実績を部門長昇進の要件に加える。
7)ロールモデルやメンター制度を積極的に活用する。
Part2:パネルディスカッション
「女性社員の活躍を促す職場のマネジメントと、メンター制度導入時のポイント」をテーマに、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏、富士電機株式会社、人事・総務室 人事部担当課長の奥井亮祐氏をパネラーに、株式会社キャリアマム代表取締役の堤香苗氏をファシリテーターに迎え、事例を紹介いただきました。
今、内閣府とともに、イクボスの普及啓発活動に取り組んでいる。イクボスとは、部下のワークライフバランスを支援し、自らもワークライフも楽しんでいるボスのこと。女性活躍を推進するためには、パートナーたる夫がイクメンでなければ難しい。夫がイクメンになるためには、上司がイクボスでなければ難しい。今、東京の企業の半数以上の退社時間が9時以降。通勤に1時間以上かかっている人たちは子どもの寝顔しか見られない。8時までに家に帰れば育児ができる。子育ては、期間限定の我が家だけのプロジェクト。早く帰れる努力が必要。
育児や介護などの事情で、フルタイムで働くのが難しい社員=制約社員が推定7割いると言われている。無理をしてうつ病になる人も増えている。
働き方を変えるためにはまず上司から変わる必要がある。
弊社は1923年の創業以来、性差や学歴によって昇進差をつけない方針だが、現実は、女性管理職比率0.1%、企画職4%。ほとんどの女性が出産を機に退職していた。
そこで、2006年に社長直轄組織として、女性活躍推進室を設置、2010年にダイバーシティ推進担当を配置。ワーキンググループを作り、女性の活躍支援を行ってきた。2014年からは、本社だけでなく、全国各地にある事業所主導の推進体制に移行し、全社的に浸透させることを目指している。
ワーキンググループで女性が退職する理由について調査した結果、管理職II級からI級への進級が壁となっていることがわかった。ちょうど20代後半の結婚や出産などのライフイベントと、進級試験の時期が重なり、ハードルが高いためにチャレンジする意欲がわかない、その結果退職してしまうという実態が見えてきた。また、育休などの各種制度が使いづらい、上司とのコミュニケーション・指導育成の不足等の問題も。これらを受けて、採用の見直し、仕事と家庭の両立支援、キャリアアップを進めてきた。メンター制度にあたる「シスター制度」は中でも成功している施策。
これらの結果、女性採用比率は10%(2006年度)から28%(2014年度)に、女性幹部社員比率は0.1%(同)から1.6%(同)に、結婚出産自由の退職は27名(03~06平均)から0名(2013年度)に。2011年には東京労働局優良賞受賞、2012年度には「ダイバーシティ経営企業100選」に選定されるなど、成果をあげている。
Part3:事例紹介
労務部働き方の変革推進委員会事務局
エキスパートの本田有香氏
「キャリア形成支援」「働き方の変革推進」「女性リーダー育成」を3本柱とし、女性社員の活躍を推進。フェーズ1(2002年~)では「女性社員の採用促進と職域の拡大、フェーズ2(2003~2011)では「女性社員の定着」、そして2009年からのフェーズ3では、メンター制度を導入し、「女性社員の活躍推進を本格化。2013年には、社長自らが、「女性の活躍推進宣言」を行っている。
メンターの育成プログラムは自社で開発し、6カ月かけてメンターを育成。メンターとメンティの関係だけでなく、メンターの上にアドバイザーを置くのが特徴。アドバイザーは、メンターの良き相談役となり、さらに、その経験を自分の部署のダイバーシティ推進にも活かす。結果として会社全体の活性化につながっている。
経営企画部 人事課
大木麻衣子氏
新卒者の離職率が高く、3カ月で辞める社員が多かった。ベンチャー企業ゆえの急成長に社員がついてこられない、土日や夜にお客様に呼ばれることが多いなど、仕事の忙しさに加え、先輩も忙しくて後輩の育成ができず放任していることも一因と思われた。
組織を急に変えることは難しいが、コミュニケーションのあり方を変えることで解決できるのではという仮説のもと、メンター制度を導入。1年後、新入社員の退職者はゼロとなった。会社全体で新人を育てようという意識が高まった。新人も自分の目の前の仕事だけでなく他部署の先輩と話すことで視野が広がったなどのメリットもあった。