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【第二回:定例勉強会】メンターとしてのスタンスと、会社を超えた横のつながり

9月4日、「キャリア・マムホール(多摩センター)」で、メンター育成プログラム 女性たちのための第2回定例勉強会が、開催されました。 前回に引き続き、今後会社の中で中心的な存在として、後進の女性を支援するメンターになることが期待される女性20名が参加しました。
キャリア・マム 代表取締役社長の堤香苗より、「みなさんは、女性が働きやすい仕組みづくりの先陣を切るという期待を背負って参加している。ぜひここでネットワークを作り、困ったときは互いに相談し合える関係を作ってほしい。会社に戻ったら、この場にこれだけの会社がメンター制度や女性の活用に関心を持って参加しているということを伝えてほしい」とエールが送られました。

Part1:レクチャー1

8月1日に三菱UFJリサーチ&コンサルティング主催で行われた第1回メンター育成研修の報告と、研修参加者の感想を発表していただきました。
研修の報告をしていただいたのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング コンサルティング・国際事業本部 組織人事戦略部 コンサルタント 新井みち子さん。

研修の参加者の動機で多かったのは、「社内では女性社員は少数派なので仲間が欲しい。他社との横のつながりが欲しい」というものでした。
研修の中で、①メンターとして活動するうえでの不安を話し合う。②ケーススタディとして用意されたメンティの悩みに実際にどう向き合うかをロールプレイするという、2つのワークショップを行いました。
①では、参加者から「メンターの役割を期待されているが、自分のスキルや経験では不安。世代の違いによる不安もある」「自分もメンターが欲しい」「もっと自分が学びたい」などの悩みが聞かれました。
②では、「入社3年目、25歳で仕事の壁にぶつかっている」「29歳、第1子出産後復帰し、仕事と育児の両立に悩んでいる」というケースについて、メンターとしてどうアドバイスをするかをロールプレイ。その後の振り返りでは、「自分は子どもを産んだ経験がないのでどう答えたらいいかわからない」「自分も経験が浅いので答えられない」などの声がありました。
しかし、メンターの役割は、メンティの課題を解決することではありません。メンティの話に耳を傾け、一人で抱え込まなくていいんだよと言ってあげること。経験やスキルがないことは問題ではありません。傾聴し、メンティの選択肢を広げてあげることがメンターの役割なのです。

【参加者の感想】
株式会社イマジンプラス 
藤井佳子さん

メンターとして、メンティにどう関わったらいいかという不安があった。研修に参加して、同じ不安を抱えている人がたくさんいることがわかり、話し合うことで、自分の立場が理解できた。 ケーススタディでは、他の人のアドバイスを聞くことで、こういう糸口もあるんだと、新たな発見ができた。

【参加者の感想】
株式会社マイソフト 
伊藤藍さん

今の会社は入社してまだ2カ月。メンターとして何をしていいか全くわからなかったが、グループワークのメンターは、子育てと仕事を両立しながらキャリアアップしている人も含め、いろいろな立場の人がいて、彼女たちが私にとってメンターになった。セミナー後、メールを出すと全員から返事をいただき、同じような働く女性の交流や横のつながり増えた。直接ビジネスにつながらなくてもこのような関係ができたことはとてもよかった。

Part2:セミナー 「メンターって何?」中央大学法学部教授 広岡守穂先生

5人のお子さんの父でもあり、『男だって子育て』 (岩波新書) 、『女たちの「自分育て」』 (講談社ニューハードカバー)などの著書でも知られる広岡教授。ご自身の妻との関係、子育て経験を例に挙げながら、メンターとは何かをお話しいただきました。

○職場も家庭も基本は同じ
「仕事と恋愛は家庭に持ち帰らない」が日本の、とくに男性の常識。
家のことは奥さんに任せておけばいいという意識の会社が未だに多く、ワークライフバランスは会社にとって負担と思っているところが多い。
スウェーデンでは、ワークライフバランスを「ライフパズル」と言う。ワークライフバランスと似ているようでコンセプトは全く違う。家庭での経験も職場の経験も本質的には同じ。家庭の経験は仕事にも活かせるという考え。

○妻との関係から
妻と学生結婚。妻は次々に出産。自分は、生活費を稼ぐのに一生懸命で、妻の子育ての大変さが見えていなかった。平日手助けができない分、休日は家族と過ごす時間を作っていたので、自分としてはよくやっている、家族との生活は楽しいと思っていた。妻が、子育ての大変さをこぼすようになっても、大変なのは当たり前、母子はいっしょにいるほうが幸せなはずだという思い込みがあり、とくに気にとめなかった。
3人目の子どもができたときに、妻の怒りが爆発。「じゃあ、どうしたらいいのだ」と聞いたら、「一時間でも一日でも子どもを預かって、私を一人にさせてほしい」と。全く予想もしない答えだった。「なんで言わなかったの?」と言うと「何度も言ったが聞いてくれなかった」と言う。自分は言われた覚えがなかった。妻は、子育てができない、手伝ってほしいと言うことは恥ずかしいと思っていて、遠回しに不満を言っていたが、私には伝わらなかった。しかし、妻は自分では言ったつもりで、私のことをなんと冷たい人だと思っていたのだった。
この経験から、自分は傾聴ができていなかった。メンターとして失格だと思った。また妻も、アサーティブネスが足りなかった。自分の言いたいことを過不足なく相手に伝えるということができていなかった。伝わらなければ言わないのと同じと実感した。
メンターに大切なのは、傾聴。聞き上手であること。メンティは、自分の話を聞いてくれる、信頼できると思える人を求めている。アドバイスを求めているわけではない。

【ワークショップ】

グループの中で1人メンティを決め、この人の悩みを聞く。悩みを聞いたら、他のメンバーはメンティに質問をする。聞くことで、メンティの悩みの本質をあぶりだしていく。聞く内容は何でもいい。ただし、アドバイスは一切してはいけない。していいのは質問だけ。
30分間、メンティ以外のメンバーはひたすら質問をし、メンティはそれに答える。
ワークのあと、メンティに感想を聞く。

【メンティの発表】

○1班:
率直な感想は「すっきりした」。この場で話したことは、外では口外しないというルールがあったから安心して話せた。内容は、会社の悩みという重いテーマだが、自分のことを理解して聞いてくれる人がたくさんいたので楽しく話せた。アドバイスがなくても、聞いてもらえるだけでもすっきりするのだと思った。

○2班:
一人で悶々と考えていることでも、口に出して人に話すと、いったん整理されて、また自分の中にもどってくる気がした。どんなに仲良い友達でも、アドバイスされたくなくて相談ができなかった。ただ聞いてくれるのはいいと思った。質問されることで、いつもと違う切り口で考えられた。アドバイスがいやなのは、結局決めるのは自分なので、アドバイスが的外れに感じることがあるため。

○3班:
仕事を続けるべきかどうか悩んでいたが、いろいろな質問をされたことで「あ、やっぱり私、働きたいんだ」と気づくことができた。子どもがいる人が会社にいなくて相談できる人がいない。質問によって考えが整理できてよかった。

○4班:
悩みを話すと、みなさんが賛同してくださっていることが伝わってよかった。アドバイスをしてはいけないというルールだったが、私は、具体的なアドアイスがほしかった。

【参加者の体験談】 会社からメンターの立場を求められている方々3人に聞きました。
伊藤忠アーバンコミュニティ 川島幸恵さん

当社は、女性の多い職場で、34%が女性。でも、出産し育児休業後復帰する事例は少なかった。ところが、最近では復帰して時短勤務のメンバーが15名と増えてきた。これまでは部署ごとに対応してきたが、個別対応では間に合わなくなってきた。そこで昨年から、育児介護支援協議会をスタート。女性だけ、育児だけではなく、男性や介護も視野に入れて、育児介護をしながら働く社員が何を求めているかを検討しながら、進めている。社として、くるみんマーク(子育てをサポートする企業として厚生労働大臣が認定していることを示すマーク)も取得。会社がこのような取り組みをしていることを社員にも知ってもらうことで、社員全員が働き方の意識を変えてくれればと考えている。

たなべ物産 平野知子さん

育児休暇取得第一号。子どもが1歳になるまで使えるが、保育園の事情で、7か月で復帰。周囲から、「そこまでして働かなくても……」「まだ3歳になってないのに、かわいそう」と言われ、驚いた。本当に子どもはかわいそうなのかと考えた。独身時代は全く知らなかったが、子育てはとても大変で、7か月でも、とても窮屈だった。こんなにストレスになるのに「3歳までいっしょにいてあげたら」と言われてもそんな気になれない。自分が元気になるために、働こうと思った。子どもも、保育園のほうが、同じ年ごろの子と遊べる。大人といるより子ども同士でいるほうが成長できる。保育園に預けるのはかわいそう、と思わなくなった。すると、仕事をしている間の気持ちも前向きになった。 先日、子どもの面倒を見るために半休を取った男性がいた。社内の女性の反応は「え?男性なのに!?」だった。まだまだ女性でもこのような反応がある。こういう人たちに考え方を変えてもらえればと思っている。会社の中で声を出していこうと思っている。

ベアーズ 木造友紀さん

当社は、残業や休日出勤も多く、1年もたたずに辞めてしまう新卒女性が多かった。社員を育成できないうちにリタイアさせてしまうのか会社に問題があるのではと、メンター制度を取り入れた。今年で3年目。以来、新卒者でリタイアした社員はいない。最初は浸透させるのが難しかったが、メンター制度はうまくいっているのではないかと思っている。 いくつかルールがある。①必ず1対1で会う。②必ず社外で会う。社内だと面談みたいになってしまうので。③おいしい食事、お酒を飲むなど一緒に楽しめる+αをつける。そのための費用は会社が一人3000円まで負担する。④必ず月1回行う、⑤メンター、メンティは、同じ部署でない人とのペアにする、⑥必ず同性同士にする、⑦指導はしない、など。  人事、上司に報告書を提出するが、プライベートなことは書かない。会社として改善したほうがいいと思われること、報告したほうがいいことのみを記載する。 その他、自分が個人的に心がけていることは、不安と不満は違うということ。不満は愚痴。ただ「そうだね、そうだね」と聞いてあげることが大事。不安は、何かしら会社として手を打たなければならない。場合によってはアドバイスも必要。メンティの言っていることは、不安か不満かを見極めることがメンターの大事な仕事かなと思う。

Part3:今後、この勉強会で何ができるかを話し合う

勉強会はあと1回で終了。その後、メンバーたちはどのようにつながっていけば、楽しいことができるか、何があれば仕事が楽しくなるか、グループで話し合いました。定期的な交流会、飲みニュケーション、SNS、傾聴などの勉強会、などの意見が出ました。

○1班:
ビジネス:メンバー各社の、各種商品プロデュース&モニター、セミナー参加
楽しみ:交流会(BBQ、屋形船、コミュニティ、愚痴り会、SNS)

○2班:
定期的な交流会

○3班:
<メンターのメンター>
・日頃社内で相談される側の人が相談できる場を定期的に持つ。
・社内全員でルールを決めた上で飲み会を開催。

<ルール>・アドバイスをしない! 質問のみ!!

○4班:
・長期間の勉強会 ・SNS ・事例の共有 ・飲みニュケーション

<まとめ>

最後に堤香苗より、「一口に女性と言っても、年齢によっても、子どもがいる、いないによっても、全然生き方が違う。生き方が違うからといってコミュニケションを閉ざすのはつまらない。お互いに思いを吐き出せる場、お互いのプラスになることを言い合う場が作っていければ人生はもっと豊かになる。みなさんがその中心になってほしい」と締めくくりました。

  次回は12月4日に開催の予定です。